マリア様がみてる 24 仮面のアクトレス (コバルト文庫)

マリア様がみてる (仮面のアクトレス)
というわけで、待望の新刊、『マリア様がみてる仮面のアクトレス』です。


あえてする必要も無いかとは思わないでもありませんが、軽くご紹介。
超人気ライトノベルシリーズ『マリア様がみてる』の最新刊、24作目となる本作では、短編2作とメインとなる中篇1作が収められています。
時期的には三学期に突入。生徒会役員選挙を軸にして、各人の様子が描かれております。
はたして、選挙の結果は、祐巳ちゃんの妹問題はどうなるのか。といったところです。


マリみてももう24作目となりました。
長いシリーズだなぁ・・・とはいえ、まだ全然足らないというかもっと読みたい気持ちで一杯だったりするんですが。本当に素敵なお話だと思います。超面白い。


で、簡単に感想から申し上げますと。
「超面白い」という一言で済ませられます。
いや、面白いですよほんとに。なんか先が読めなくなってきたというか、不安で一杯というか、驚きました。
さすがは人を驚かすのが得意な今野先生といったところ。
なんというか、物凄く先が心配でたまりません。早く先が読みたいと思う反面、ちょっとまってくださいと押しとどめたくなるような気持ちもあってやや複雑だったりしなくもありません。
何故そのような気持ちを抱いたかと申しますと、メインのお話の結末の描写が最初少し取れなかったんです。これはどういうことなんだろうかと。しばし思い悩んだんですが。
もしかしたらそういうことだろうかと、なんとなく見えてきたとたんにです、鳥肌が立つというか、私のほうが顔面蒼白というか、ちょっと待ってそれは大丈夫なのかという気持ちになったといいますか。やー、ちょっと凄いです。びっくり。
毎回、読むまで色んなケースを想定というか妄想してるんですが、その辺を遥かに、やすやすと越えてきた感があります。率直に言って、この問題に収拾がつくのか心配です。まぁ、なんとかなるんでしょうけれども・・・。凄いよ今野先生。
というわけで、ネタバレ感想していきたいなと思います。


あ、その前に、メインの中篇を挟むように配置された短編2作はとってもよかったです。やっぱり今野先生は短編が巧いなぁと思います。特に、冒頭に収められた『黄薔薇、真剣勝負』は、久々にシリアスな黄薔薇がみられますし、最後の『素顔のひととき』とあわせて読むと、令さまに感動できます。ここのところ一番成長しているのは令さまではないかと思ったり。うっかり泣きそうなくらいよかったです。今野先生は*1最後の一文に懸ける人だなぁと強く思わされました。


では、いろいろ書いていきたいなと思いますので、よろしければお付き合いください。


相変らず主要登場人物紹介ページが使いまわしで、かつ、可南子ちゃんがいない。不満だ。


それはさておき。
まさかほんとに瞳子ちゃんが出馬するとは思いませんでした。
先日、そういうことは書きはしましたけど、それは無いよなと思ってたくらいで、逆にビックリですよ。
それに、瞳子ちゃんの業というか、闇の深さに驚愕しました。なにが彼女をそうさせてるんだろうかまったくわからない。いくらなんでも謎すぎます、あの子は。仮面で素顔が見えないと、そういうことなんでしょうか。


さて、その辺の話はまた最後の方にするとして、まずは3本のお話の感想というか、いろいろ書こうかと思います。

黄薔薇、真剣勝負

ひさびさに黄薔薇メイン話。
コメディ担当だと思ってた黄薔薇でシリアスなお話がみれるのも久々といったところでしょうか。
ちょうど、前作での祥子さまからの招待状がきて、由乃さんが祐巳さんに電話をかけるところから始まっていて、久々の同時期多視点だったので、かなりわくわく。多視点はマリみての華だと思います、私は。
そこでの祐巳さんとの会話もよかったんですが、それ以上に、志摩子さんのことを親友と呼び、行動パターンが同じだと知って、喜ぶ由乃さんが可愛いというか、あまり描写の多くなかった、由乃さんと志摩子さんの仲を知ることが出来て、こちらが嬉しくなった感じです。本編では志摩子さん→由乃さんの描写もありましたし、今回は由乃-志摩子強化がテーマだったのだろうかと思っちゃうくらいです。


最近の黄薔薇由乃さんと菜々ちゃんの問題があって、そこから令さまと由乃さんの独立というか、お互いの距離を見つめなおすような展開になってました。そして、今回その辺が結実したなというところですね。
前作にも少しでていた自転車の話から始まって、菜々ちゃんと令さまの真剣勝負。
菜々ちゃんの剣道の強さに関しては意外なところでした。もっと強いのかなぁと思ってたんですけれども。
あれで、令さまに戦いを挑んだというのはやっぱり、その人となりを知っておきたかったとかそういうことなんでしょうか。
少なくとも、姉の敵討ちとかそういうことではなかったように思いますし。
そうすると、もしかしたら一方通行かとすら思われた由乃さんの菜々ちゃんへの気持ちというのも、案外双方向であったのかしらなんて思ったり。
菜々ちゃんも、令さまも、立ち会った後にそれぞれ互いを評してるんですけれども、やっぱり剣を交えてわかることって言うのもあるんでしょうね。会話したというか。お互いを知るいい機会にはなってるはずです。菜々ちゃんはわからないとは言っていたものの、やっぱりそのあたりが一番の目的だったのかなぁ。「敵いません」と言うセリフは、由乃さんを奪い取ると言う潜在意識の表れだったのかどうなのか。少し気になりましたが。


この話で最も重要なのは、「令さまは由乃さん離れした(できた)」という点ではないかと思います。少なくとも私にはそう感じられました。『黄薔薇革命』のときに、実際には由乃さんに依存して寄りかかって甘えていたともいえる令さまが、由乃ちゃんに菜々ちゃんとの関係を教えたというか、示したというか、気付かせてあげたというか。姉としての仕事をしっかり果たした姿には感動を覚えました。上でも書いたのですが、令さまは凄く成長なさってます。強くなったなと。そんな印象です。
由乃さんも、令ちゃん令ちゃん言ってた、令ちゃんしかいなかった状況から、菜々ちゃんという妹候補を得て、新たな人間関係を築きつつあります。手術後元気になった*2と言われる由乃さんですが、これから成長しそうだなぁと思いますし。令ちゃん離れ*3できる日も近いですね。黄薔薇はちゃんと成長できてると思います、健全です。元気元気。


それにしても、最後の一文は決まってましたね。自転車の話がここに来てはまったというか。
由乃さんが独り立ちできるように手助けしてあげたという事実がよくわかる。
今野先生のこういうところが大好きです。


挿絵の令さまはかっこよかったです。思わず惚れそうなくらい凛々しい。さすがはミスターリリアン
ここ最近、令さま株が急上昇してる気がします。

素顔のひととき

ひさびさの祥子さま視点のお話。祥子さまと令さま二人の会話。
祥子さまの内心というのはあまり語られないので、こう言う話には思わず飛びついてしまいます。
この話を読んでわかったのは、やっぱり「祥子さまも祐巳ちゃん離れしなければならないことには気付いていた」というところです。
「もがいてる」と祥子さまはおっしゃっていますが。
祐巳ちゃんと祥子さまが共依存(か、もしくはそれに極めて近い)状態だということはやはり祥子さまも気付いていらっしゃったようです。共倒れにならないように必死で頑張ってる祥子さま・・・いい!
いや、なにがいいのかって話なんですけれども。お姉さましてるなぁというか。やっぱり祥子さまは素敵だなと思ってしまいます。まったく祐巳ちゃんは幸せものだなぁ。
早く祥子さまが祐巳ちゃんを思いっきり甘やかせられるように祈っています。

仮面のアクトレス

さて、本編のメインといえるでありましょう、タイトルにもなっている『仮面のアクトレス』です。
ちょうど前作の引き続きの内容。
3学期になって始業式が始まり、そして、山場の山百合会役員選挙です。
前年度は、ロサ・カニーナ*4の出馬という劇的な展開だったわけですが。今回はどうなるかと思ってたらですよ、本当に瞳子ちゃんが出馬しちゃってさぁ大変。みたいな。
まぁ、一応予想というか予期はしてはいましたが、やっぱりびっくりはしました。お話的にはそう来そうだなと思ったものの、そうなってみると、どうなっちゃうんだろという不安が湧き出てきました。
と、瞳子ちゃんの問題は後回しにして、ひととおりこのお話の感想を書いておきたいと思います。


まずは、紅薔薇姉妹は例によってあまあまだなぁと。
祥子さまの卒業も近いので、拍車がかかってる感じもしましたが、いい姉妹です。
祐巳ちゃんは、各所に甘えまくってますね、素顔のひとときでも令さまが言ってたように、「赤ちゃんがえり」現象なんでしょうね。志摩子さんとイチャイチャしてましたし。はからずも瞳子ちゃんの前でそんな真似してたわけですが、瞳子ちゃんの心中やいかにといったところでした。
しかし、瞳子ちゃんを前にして、足ががくがくしてた祐巳ちゃんっていうのはなんだったんだろう。やっぱり振られたのがそのくらいショックだったということでしょうか。祐巳ちゃん、案外打たれ弱いのかもしれません。よくよく考えると、苦境は必ずと言っていいほど乗り切ってる祐巳ちゃんですが、今回ほどのピンチは過去なかったかもしれません。しかも、今度ばかりは自分で何とかするしかありませんし、全てが祐巳ちゃんにのしかかってる状態。そのプレッシャーなんでしょうか。


乃梨子ちゃんは、最近ずっと変です。瞳子ちゃんのこととなると、冷静さを欠いてます。いつもの万能ぶりがなりを潜めている昨今。いつの間にかリリアン一のお友達になっていた瞳子ちゃんのこととなると、すごく熱くなってる気がします。もちろんそれでいいんですけれど。あまりに瞳子ちゃんがアレなものだから、乃梨子ちゃんとしても、やきもきしてしまうのもわかります。わかっていて手を出せない*5もどかしさみたいなものがあるんでしょうね。
志摩子さん、乃梨子ちゃん。白薔薇姉妹は、各々一人づつとしてはそれなりに見せ場はあるし、目立つ場面もあるようにはおもうんですが、こと、二人きりの場面となるととたんに背景化している気がします。まぁ、いちゃいちゃを見せ付けられても困るんですが。白薔薇ファンの方々にとっては不遇だななんて思ったりもしないではありません。
で、その志摩子さんの見せ場が、挿絵付きの場面。由乃さんに対して*6のセリフ。

「・・・・・・由乃さんの、そういうところ、好き」

ストレートというか、素直と言うか。読んでるこっちの顔が赤くなりそうな発言。志摩子さんはやっぱり天然系なのかなぁ。
それは由乃さんでなくても、びっくりしますし、赤面もしますし照れるでしょう。
照れてる由乃さんも可愛かった。


どうやら今年も、新聞部がらみでバレンタインのイベントがありそうです。
今度こそここで瞳子ちゃんと絡めてなんかやるんでしょうか。ていうか、やらないと間に合わない気がしますが、ただ、生半なイベントでは、あの状態の瞳子ちゃんをどうにかすることはできなさそうな気がします。ここは今野先生のお手並み拝見といったところでしょうか、非常にとても楽しみにしてます。


乃梨子ちゃんと瞳子ちゃんのやりとり読んでて、やっぱりわからないなぁという思いを強くしたわけですけれども、本当に謎。なにが瞳子ちゃんをああまでさせるんだろうかわからない。よっぽどの、それこそ深く果て無い事情があるんだろうと言うことしかわかりません。一体どんな事情なんだろうか知りたくてたまりません。


届出直前の、2年生トリオのやりとりは和みました。いいトリオです、この三人。静と動と緩衝材か。バランス取れてます。
それにしても、いい友達もったもんだなぁ。祐巳ちゃんは果報者すぎます。


祐巳ちゃんが困っている。そういうときに現れるのはあの人と相場が決まっています。
聖さま*7
間違っては無いんですが、もう一人重要な登場人物がいます。
蔦子さんです。
思えば、いまの祐巳ちゃんがあるのは蔦子さんのおかげです、足を向けては寝られませんし、祥子さまとの写真のひとつやふたつやみっつやよっつ撮らせてあげてもまったく追いつかないくらいの恩があるはずです。
祐巳さんウォッチャーである蔦子さんは、今回も悩める祐巳さんを助けています。ああ、なんという素敵な人でしょう。
蔦子さん大好き。
それにしても、ここでも瞳子ちゃんは仮面を被ってると評されてます。志摩子さんからも心を閉ざしてるという評がありましたし。瞳子ちゃんの闇の深さが感じられます。陰鬱だなぁ。


可南子ちゃんの出番があったのでとりあえず満足です。
妹レースを降りて以来、なんだかますます好きになっちゃった感じなんですけれども、いい子ですよ可南子ちゃんは。
ちなみに、可南子ちゃんからみた瞳子ちゃんの評は「信念(に近い感じ)」だそうです。これはキーワードですね。


この直後に現れる祐巳ちゃんの信奉者という子の祐巳ちゃん評がかなり笑えます

「そりゃ、祐巳さまには小笠原祥子さまみたいに近寄りがたいほどの美貌やにじみ出る知性や貫禄はないけれど。これからもそこには期待できないかもしれないけれど。(後略)」

真実だけど、言って良いことと悪いことがあるでしょと。かなり笑わせてもらったんですが。
これが瞳子ちゃんへのセリフということで、釈迦に説法状態なのがまた笑えたり。ギャグだなぁ。
それにしても、瞳子ちゃんの孤立ぶりは際立ってますね、ほんとに大丈夫なのか心配になるくらいです。自暴自棄なんでしょうか。


次のシーンは結構驚いたんですが、瞳子ちゃん母*8のご登場。しかも、祐巳ちゃんとの遭遇。お互い顔は知らないので、誰かわからないまま*9だったんですけれども、瞳子ちゃん母からはからずも、瞳子ちゃんの内心が語られてしまいました。まぁ、そういう役所だったんでしょうけれども。そこからわかったのは、瞳子ちゃんはどうやら、彼女自身が当選するとは思ってないらしいことと、2年トリオ(祐巳ちゃんを含めて)嫌いなわけではないと言うことです。結構重要な要素ですよねこれは。あ、それから、家の人には自分が立候補したことは伏せてるようですね。


その瞳子母(と思われる人)は娘の忘れ物を届に来たそうなんですが、その忘れ物と言うのが上履きだったようで、瞳子ちゃん嫌がらせを受けてるようです。それはまぁ、あまり重要なことでは無いと思います。リリアンの子でもそういうことするんだなという点はまぁ目をつぶって。ここでわかったのは、(母)親との関係はおそらく良好だということです。一応、瞳子ちゃんの状況については小出しにはでてきてますね。まだ全体像というか、真実は全く見えないんですが。


演説会の日、祐巳ちゃんが先日会った瞳子ちゃんのお母さんから聴いた話で、立候補取りやめをやめることを決意したというセリフの後の祥子さまが素敵でした。この後の、祐巳ちゃんを抱きしめてるシーンを読んでも思ったんですが、『素顔のひととき』では、姉としての振る舞いに思い悩んでらっしゃるみたいでしたが、私はちゃんとお姉さましてると思います。素敵です、祥子さま!


どうでもいい話なんですが、瞳子ちゃんが演説会の日に食べていたと言う「*10マスタード・タラモサラダ・サンド」。懐かしい代物が出てきました。聖さまが『黄薔薇革命』の劇中食されていたものです。これは何か意味があるんでしょうか・・・。全く無いとも思えないんですが、かといって何かを見出すには材料が少なすぎるんですよね。暗示的な何かがあるような気はしたんですけれど。


演説直前のシーンでは、みんなそれぞれらしい応援風景といったかんじでした。白は乃梨子ちゃんが精一杯志摩子さん応援してたし、紅は祥子さまが祐巳ちゃんを抱きしめてあげたし、黄は黄でじゃれあってました。
で、瞳子ちゃんはここでも独り・・・。強い子だなとは思うんですが、大丈夫なのか少し心配です。


去年は流された演説、今年は一応内容もわかるようになっています、これは意味のあることだと思いますけれども、一人一人内容を要約してみてみると。
まず、瞳子ちゃんは「新たなる風を」。世襲制に対する疑問を投げかけてました。これは重要かもしれない。
志摩子さんは「薔薇さまの経験を生かして」。貫禄ある演説ぶり。
由乃さんは「部活動の改善他」。やっぱりというかヒートアップしてましたね、微笑ましい。
祐巳さんは「蓉子さまからの悲願である開かれた山百合会」。と言った話。はからずも、瞳子ちゃんと真っ向から対抗する内容になったと、祐巳ちゃんも述懐してます。
また、祐巳ちゃんはこうも思います。

ありのままの自分を見てもらう。
選挙と姉妹になることは、どこか似ている。

なるほど、と思った。
ここで一言書いておくと、つまり、ありのままの自分を見てもらってない人は、姉妹になることから遠いといえるのかもしれません。


さて、いよいよ投票。
去年はわからないままだったんですが、リリアンの選挙は単記投票のようです。とすると、結構投票結果はばらついてしまいそうですね。


結果発表、我らが2年生トリオは当然のように当選。おめでとう。
そして、問題のラストシーンになるわけですよこれが。
最後の4行抜粋させていただきます。

乃梨子ちゃんの顔は蒼白だった。たぶん、祐巳も同じような表情をしているはずだ。
瞳子の目的は、負けることだったんです」
ああ、やっぱり。祐巳は思った。
自分だけではなく、乃梨子ちゃんがそう言うのだから、たぶん間違いないのだろう。


これです。
これで終わるんだこれが。
ただ、最初、一読した時は、「何故二人とも顔面蒼白になるんだろう」と疑問でした。しばらくわかりませんでした。
少なくとも、読者にとっては、瞳子ちゃんが負ける為に出馬したであろう*11ことは既にわかってはいたからかもしれませんが、何故そこまで驚く、というか恐怖というか、そういう態度になるのかなと。思ったんです。
で、読み返して、何となく見えてくるものがあったんですね。そして、おそらくこれはそういうことなのかと思って、そうに違いないと思った(わかった)とたんに私の顔が蒼白になるくらいビックリしたわけですよ。
瞳子ちゃん病みすぎ!闇が深すぎる」と。
やっぱり、その闇の深さの根本的な原因と言うのは今回もわからずじまいです、徐々に情報は出てきてはいますが、推測すら難しいくらい乏しい。なので、そこはあまり考えないでおきます。
ただ、今回、瞳子ちゃんがなぜ立候補したか、その理由はなんとなく見えました。

瞳子ちゃんは、なぜ立候補したのか

まずは、私がわかった気になった、そこに至るまでに考えたことを書いておきたいと思います。
最初は、やっぱりあてつけ的なことなのかなぁくらいに思っちゃったわけです、瞳子ちゃんも結構な天邪鬼というか、ツンとでもいいますか、素直な子ではないのは間違い無いと思いますし。
けど、どうやらそうでもないらしいと、マリみて世界の諸葛孔明たる*12乃梨子ちゃんが言うわけですから、そこは否定せざるをえません。
いろいろと、単純には理由はでてくると思うんです。たとえば薔薇さまになりたいだとか、目立ちたいだとか、思い出作りだとか。けど、そんな半端な理由ではどうやらなさそうだな*13ということになって、私が最初に思ったのは、祐巳ちゃんのために立候補したのかもしれないと言うことでした。
祐巳ちゃんの為というのは、祐巳ちゃんに、(たとえ自分がかませ犬となり、周囲に嫌われてでも対立候補となってでも)立派な紅薔薇になって欲しいという気持ちで立候補した。という説です。
結果から言うと、実際そうなってるわけです。だからこそそう思ったんですが。実際、演説直前の祐巳ちゃんは、こう描写されています。

瞳子ちゃんが立候補したことで、選挙に取り組む祐巳の姿勢は絶対的に変わったはずだった。

おそらく、単なる信任投票だったら、もちろん当選したとは思いますが、自分を見つめなおしたり、成長したりということはなかったかもしれません。
そう考えると、瞳子ちゃんが、祐巳ちゃんの為に立候補したと言う考えもあながち間違ってないんじゃないかななんて思いはしたんです、可南子ちゃんの言う「信念」みたいなものというのももしかしたら・・・と思った。
けどこれだと、最後に二人が顔面蒼白になった理由にはならないんです。
もちろん、そこまでして、私(祐巳ちゃん)のことを・・・的な驚きがあったとしたらまだわかりませんが、どうやらそういう質の驚き方ではないように思われたわけで、残念ながらこの説は却下。
はっきり言って、ここまでの記述から答えを導き出すことは出来なかったので、とうとう私は逆算しました。
まず答えを見つけてからつじつまを合わせるしかないなと。
二人が驚愕した、恐怖した(するべき)理由は何か。


瞳子ちゃんの強固な意志、「あなた(祐巳ちゃん)の妹にはならない」という強いメッセージを受け取ってしまった。


という事かなと。祐巳ちゃんと乃梨子ちゃん。この二人に共通する問題と言うのは、当然のように「瞳子ちゃん」の問題しかありません(少なくとも現時点では)。そうすると、その瞳子ちゃんにやられて一番怖いことは何かと考えると、「妹になることの拒否」かなと。そうすると、まるで見えてこなかったパズルのピースがカチリカチリと音を立ててはまりだすように私には思えたんですね。
ああ、そういうことかと。
立派な薔薇さまになると思い、嫌いでもないのに、信念を持ち対立候補として負ける為に立候補した。そして結果見事に負けた。
残った結果は何か。
世襲薔薇さま誕生です。結果としては。
もちろん、3人は薔薇さまに相応しい人物です、けど結果的にはそうなってる。
基本的には、薔薇のつぼみが次期薔薇さまとして立候補するわけです、そして、祐巳ちゃんの妹となる子は自動的に次期薔薇のつぼみであり、当然その次の年、薔薇さま候補として立候補することになる。
ここです、やっと辿り着いた。
深読みしすぎかもしれないとは思いましたが、そうでもないと、二人の反応が理解できなかったんです。本当は灯台下暗し。もっと単純なことなのかもしれない。けど、どうでもいいことをこねくり回して考えてしまう私はそういう理由を見つけ出してしまいました。
瞳子ちゃんはこういいたいのではないかと。


「一度落ちた(薔薇さま不適格の烙印を押された)私を薔薇のつぼみにするつもりですか」
「そういう人間を妹にするおつもりですか(できませんよね)」


と。
外堀を埋めた(この場合、掘ったとでもいったほうがいい気もしますが)わけですね。
妹に出来ない(すくなくとも、以前より遥かにしにくい)ような状況を作り上げたと。
もちろん出来ないわけではないでしょう。一度落ちた人間が再度立候補してはいけないなんて校則は多分無いと思いますし。
けど、もし、瞳子ちゃんを妹にしようとなったら、そうとうな風当たりがあることは予測できます。
薔薇のつぼみとして相応しくない。という話はでるでしょうね、きっと。
瞳子ちゃんはそういう状況をつくりあげた。
今書いてても、自分でそんなことあるんだろうかと半信半疑で少し鳥肌が立つ*14くらいなんですが、なんという深謀遠慮かと。そこまでして、妹になりたくないのかと。なにが、彼女をそこまでさせるのかと。あまりの瞳子ちゃんの闇の深さに驚愕した*15わけです。


やっぱり、書いててもいくらなんでもそりゃ私の考えすぎだろうと思ったりもするんですが、これが一番しっくりくるのもまた事実です。
もしかしたら、やっぱりもっと単純で納得できる事実があるんでしょうか。
これはやっぱり、色んな人の感想見てまわるしかないでしょうかね。できれば、これ以外の理由を見つけてホッとしたいところです。正直。


いろいろ書いてきましたが。
マリみてがとても楽しいことは間違いありません。ここまで強く拒絶する瞳子ちゃんのその理由を知りたいし、どういう展開で祐巳ちゃんが落とすかというのもとても楽しみです。こうなったら。
次回はおそらくバレンタインだと思います。祥子さま卒業まで残りは「バレンタイン前・後」「卒業前・後」で4巻くらいなんでしょうか。タイムリミットは近い。まさかそれ以降まで伸ばすとはさすがに思えないんですが、本当にどうなるでしょうか。とてもとても楽しみです。続きが読みたいけど、読みたくないというジレンマ。マリみてが終わるのはいやだけど、先は読みたい。マリみて好きです、ほんとに。


マリみてを読むといつも気持ちも思考も暴走する*16ので、今回もちょっとおかしいところは多いかもしれません。
どう考えてもそれはおかしいだろうと言う指摘等ございましたら、是非ともコメントお寄せください。お待ちしております。
ここまで熱くなれるのもやっぱりマリみてくらいですね、私にとっては。素敵な作品をありがとう、今野先生。


例によって、後ほど誤字脱字等あったら修正すると思いますし、あるいは加筆訂正するかもしれませんが。
しない確率のほうがやや高い気もする七月一日。それでは皆様ごきげんよう

*1:他の作家さんもそうかもしれませんが

*2:暴走してる

*3:別れるという意味ではなくて、依存関係から脱却するという意味で

*4:本編中でもこの名前が出てきてましたが、やっぱりインパクトある方ですよね、静さまは

*5:もしくは、手の打ちようが無い

*6:志摩子さんのこの発言の直前の由乃さんのセリフもよかったんですよね、とても率直で由乃さんらしい

*7:残念ながら?今回も登場はありませんでした

*8:はっきりとそういう説明はありませんでしたが、その後の状況から間違いないと思われます

*9:「どこかで会ったことがないかしら」というセリフがあるんですが、おそらくこれは『子羊』の時のことではないかと私は思いましたがどうでしょう

*10:熱狂的な固定ファンしか注文しないといわれている

*11:というか、勝てると思ってはいなかったであろう

*12:アドバイスが正確だと言う点で

*13:どの理由も、可南子ちゃんの言う「信念」ぽい物からは遠い

*14:エアコンの効きすぎという説あり

*15:勝手に自分でストーリー作り上げていうのもなんですが

*16:これ書くのに読み返しながら5時間もかけてる自分に笑える