マリア様がみてる 25 大きな扉 小さな鍵 (コバルト文庫)

マリア様がみてる (大きな扉小さな鍵)
はい、というわけで買ってまいりました!待ちに待ったマリみて新刊『マリア様がみてる 大きな扉 小さな鍵』です。
私にとっての最優先事項であるところのマリみてです。
見た瞬間、その場で読んでしまおうかという誘惑に耐えるのに必死でした。
よくぞ、家までおとなしく帰ってきたものだなぁと、今にして思いますが。


いや、それにしても、これは素晴らしい。
もう読んだんですが、これは凄かったです、近作の中では一番の出来。
頁を括るのももどかしいというか、じっくり読んで味わいたいけれど、先が読みたくて仕方ないという、本当に面白い時の状態に陥りました。すっごく良かったです。
なんでしょう、けれど、すぐにでも次が読みたいというわけでもないんです。
落ち着いたというか。
何故落ち着いたかについては最後にでも書きます。


さて、といったところで、内容に突っ込んで書いていきたいなと、思います。
今日は書けるとこまで書いてみたいと思いますので、よろしくお付き合いください。




ところどころ、謎の残る部分はあるんですが、それ以上に明らかになったことの方が多かったなと思います。
その辺はおいおい書いていくとして、最初から順を追って書いてみたいと思います。ばらばらになったらそのときはそのときで。


で、今回もいつもの 常春の国マリネラ 「ごきげんよう」から始まるイントロだったわけですが、今回のイントロはとても意味深な感じがしました。
確かに、イントロは常に意味深ではあります。
その巻を暗示する役割があるとは思うのですが、今回は読み終えて見直すと、なるほど、といった感じのするイントロでした。
特に最後の行

向こう側から「どうぞ」と扉が開かれるまで待たなくては、扉は永遠に開かない。


と言う一文。
まぁ、実際はこじあけてしまえばいいとも言えるんですが、そんな野暮な真似はしないわけです。
向こう側から開けてくれるのを待つ。
それが今回の祐巳ちゃんの行動を表してたのかなと、そんな感じがします。


しかし、それにしても、祐巳ちゃん視点が全く無いというのは驚きでした。
以前私は、祥子さま視点や、瞳子ちゃん視点の話も読んでみたい、と言った事を書いた記憶があるんですが、まさかこんな形で実現するとは思ってもいなかったので不意打ちを食らったというか、とにかく驚きです。
ただ、今回最初の数ページを読んで、「これは次巻で決まる!」と直感的に思いました。どうしてだろうと思って読み直していたら、思い出しました。


なんだか一歩引いた感じがしたんです。
これまで祐巳ちゃん視点でおせおせで来てたところに、スッと乃梨子ちゃん視点が来て、インターバルを置いたというか、さぁ、始まりますよとでもいわんばかりの何かを感じたんです。まぁ、考えすぎかもしれませんが。


祐巳ちゃんが物凄く落ち着いてました。諦めたわけでもない。
諦観ではなく達観とでもいうんでしょうか。なるようにしかならないと腹を決めた感じがしました。由乃さんではありませんが、祐巳ちゃんは大人になったものですね。


そう、そしてその由乃さんですが、これが面白かった。
最近の由乃さんというか、黄薔薇はもともとコメディ担当ではありますが、本当におもしろかった。
乃梨子ちゃん視点からみた由乃さんもよかったんですが、後段ででてきた由乃さん視点の話がすっごい面白かったですね。
三奈子さまの跡を継いだ真美さんが、恒例(にしようとしている)バレンタイン企画を持ってきたときの話だったんですけれども、由乃さんの反応というか、墓穴の掘りっぷりというか、素敵でした。
まず、反対ありきで突っ走っていたら、周りがみんな賛成に傾いてどうしようもなくなっていくところがとても由乃さんらしい感じがして笑えました。
この場面は、笑えるだけでなく、前巻での演説と絡めて話が進んでいたのもなかなか良かったかなと思いました。
この場面の最後、空気を読みきった真美さんは、やはりできる子です。
企画の話が進むところでは、白薔薇姉妹が見せ付けてくれて、あらあらといった感じのアツアツっぷりでお見事でした。志摩子さんもデレデレじゃないですか。それでいいんですか!
いいんでしょうけれど。


上で少し書いてたんですが、由乃さんと祐巳ちゃんの会話シーンで、祐巳ちゃんは自ら「焦らなくなった」といったことを述べています。凄く落ち着いてる。
今までは、やっぱり何が何でも妹を作らないといけないと言うのが先に立っていたのかもしれません。
姉妹関係よりも人間関係のほうが先なのだと気付いたのか、考えたのか。
ともかく、そういうことかなぁと思います。
次の場面での乃梨子ちゃんとの会話でも、瞳子ちゃんのことを聞かれて即答しています。

瞳子を、好きですか」
「好きだよ、大好き」


信念めいたものを感じます。
けれども、これが一番大事なところなんだろうなぁ。
妹にするしないでなくて、まずは好きかどうか。
瞳子ちゃんをみてあげられるかどうか。
祥子さまとの時もそうだったように。


話は少し戻って。
ここでは祥子さま視点の話が入っています。
かなり久しぶりですね。
紅薔薇の蕾の不在」以来でしょうか*1
はっきりいって、これだけでも私は満足できたんですが。
今回は盛りだくさんすぎです。
で、今回は小笠原邸にて、清子小母さまと、優さんが登場。


なんだか凄く重要な情報が出てきたような気がします。
そう、甘すぎるお饅頭は抹茶と頂くと美味しくいただけます。
って、違う!
違いますね。
優さんの発言が気になります。
最初読んでいたときは、先が気になっていたこともあって、ひっかかったものの、そのまま読み進めたんですが、よくみるとおとんでもない発言をしているような気がします。

「優さん。祐巳のこと好きなの?」
中略
「何をおかしな事を言うんだ。僕は−−」

この場面。
祥子さまが、ふと思ったことを口走ったあと、優さんが狼狽して答えたところです。
で、この少し後、祥子さまと優さんは、彼自身がミスをしたことにお互い気付いています。
簡単に言えば、優さんは祐巳ちゃんが好きだと。
・・・へぇ〜。
なんでしょうね、驚くべきことなんだけれど、そう驚かないというか、ある程度予感はしてたってことなのかなと自分でも思うんですが。ともかく、まぁそう言うことです。
それにしても、祥子さまも大人になったんだなぁと感慨深い。
それと、もうひとつ、優さんの同性愛者発言は方便だったと言うことが明らかになったようです。
一応優さんは「男が好きなのは本当だよ」と言ってはいますが、すぐ祥子さまに「男が、でなくて、男も、でしょう?」と突っ込まれています。


それから、別のところでもひっかかりました。
祥子さまは、祐巳ちゃんが瞳子ちゃんにロザリオを渡そうとしたことに関して「少し突然な気がした」と思ってらっしゃったみたいです。
意外。
とはいえ、祥子さま視点だとそうなのかな。
そういえば、祐巳ちゃんは妹問題に関しては殆ど何も祥子さまに告げていませんからね。
そういうことなのかもしれない。


今回のマリみては2部構成。
多視点で綴られる「キーホルダー」
そして、とうとうきた、瞳子ちゃん視点*2の「ハートの鍵穴」です。


瞳子ちゃんの内心、およびその家庭環境といったものは永らく謎*3とされてきました。
これが、祐巳ちゃんの妹問題の一番の謎であり、壁だったと言っていいと思います。
それがとうとう語られた、明かされた。これは大きい。
正直言って、読み始めた瞬間「きたーっ!!!」と思いました。
ぞくぞくしましたね。
もちろん最初から楽しんで読んでいたんですが、俄然読む気がでたというか、気合が入ったと言うか。
本当に、先が読みたくて読みたくて仕方ない状態でした。
今巻は本当に読み応えがあったなぁと思ってます。


実際のところ、瞳子ちゃんの抱えていた問題。可南子ちゃんに対して、かすり傷と言ってしまうほどの問題というのは、瞳子ちゃんが養子だったと言うことみたいです。そして、後を継がないといけないと思っている。いや、「思っていた」でしょうか。
例の家出の時にその問題が起こったと、そう言うことみたいですね。
終盤の記述をみるに、そういったことに思い悩んでいたが故に、自分が幸せになってはいけないと思っている節*4が見受けられました。なるほどねぇ、それが自ら扉を堅く閉ざしていた理由か。やっとわかってほっとしたというか、なるほどなぁといったかんじです。


それにしても、本当にびっくりしたのは、演劇部の部長さん。
良い人だなぁ・・・。
しかし、まさか瞳子ちゃんに妹になれと言い出す*5とは・・・
瞳子ちゃんもそのまま妹になったらいいのに。とは言いませんが。そう言う展開になったらすっごい面白かっただろうなと思います。少しドキドキしましたしね。「もしかしたら・・・」って。ないですよね、はい、無いです無いです。
で、瞳子ちゃんを見つづけたと言う部長さん曰く、「瞳子ちゃんは祐巳ちゃんが好きだ」と。
瞳子ちゃんもとうとう否定しませんでしたし、いよいよ確定*6です。
長かったですね、ここまで。長すぎるよ!


そして、またまた優さん登場。
ここで重要なのはもちろん「おしっこ!」
・・・言うに事欠いておしっこは無いだろうと思ったんですけれどね。そうとう焦ってたんでしょうか。
いや、これはこれで驚いたんですが、ここで明らかになったのは、『子羊たちの休暇』の時になぜ瞳子ちゃんがカナダにいかなかったのかについてです。いや、もうここで書きますけど、バレバレでしたけどね。
やっぱりあの頃から祐巳ちゃんのこと気にはしてたんですね、瞳子ちゃん。


そして、瞳子ちゃんと祐巳ちゃんの邂逅とかくと仰々しすぎますか。久々の出会い。
一緒に下校と相成って・・・
そして、瞳子ちゃんが勝手な誤解をして祐巳ちゃんに暴言を吐いてしまうと。
この時の祐巳ちゃんは、上で書いたように、姉妹関係とかではなくて、人間関係を大事にしようとしているように感じました。瞳子ちゃんを瞳子ちゃんとして受け止めようとしている。
ところが、瞳子ちゃんは、クリスマスのときも、今回も思い込みで凄い誤解をしちゃうんですね。
なんでそう悪い方に思い込むかというのは、やっぱり、自分は幸せになってはいけないという思い込みがまず最初にあるからみたいですが。
その誤解を抱いたまま、今度は祥子さまに対して突っかかります。
ようやく、ここではじめて自分の誤解に気付いた*7瞳子ちゃん。
長かったですねぇ・・・。
まるで、錆びついて開かない大きな鉄扉に潤滑剤を塗布して錆びを落としたかのような。そんな瞬間。
ここでようやく、ようやく瞳子ちゃん側から扉を開く準備が整いました。
大きな扉が瞳子ちゃんの心であるとするなら、小さな鍵は瞳子ちゃんを心配する人たちの善意(の積み重ね)かなぁという気もします。
はっきり言えば、勝負(かどうかはともかく)は、ここでついたと言っても過言では無い。
間違いなく、祐巳ちゃんと瞳子ちゃんは姉妹になります。ならなかったら・・・ならなかったということで。
いや、それはそうと。
今まで祐巳ちゃんの果敢なアタックを鉄壁の守りで跳ね返してきた瞳子ちゃんが、今度は一押しで開錠する状態になったわけですが。逆に、祐巳ちゃんが再度アタックするのかというと、現状難しそうです。タイミングが悪いことこの上ない。
が、そこに現れた救世主、それが乃梨子ちゃんです。
最後の挿絵みたときに、「まさか祐巳ちゃんか!」と思ったんですが、乃梨子ちゃんでした。
珍しく瞳子ちゃんが取り乱したシーンでしたが、ようやく仮面を外すことが出来て良かったのかなと思います。
おそらく次巻では乃梨子ちゃんの活躍が見られそう。
ここまできたら、瞳子ちゃんには是非とも祐巳ちゃんと姉妹になって幸せになってもらいたいものです。


最後の最後の一文が例によって巧いなぁと思うんですよね。
カサリと音をたてたのは、例のリリアンかわら版の号外。バレンタインイベントを暗示してるのです!
だと思う。
こう言うところが痺れます、今野先生。


といったところで、今巻は終了。
いや、本当に読み応えのある本になってました。今野先生ありがとう。


あとがきで、乃梨子ちゃんについてかかれてましたね、それによると、次巻か次次巻でやろうとしていたことに繋がらなくなったとか・・・「そこまでひっぱるつもりだったんかい!」って気もしないでもないですが、まぁそれはそれで。さて、どうやら攻守逆転の様相。次回以降どうなりますでしょうか。楽しみに待ちたいと思います。


小ネタですが、人物紹介で可南子ちゃんが復活してました。
万歳!ヽ(´ー` )ノ
今巻では、瞳子ちゃん視点の話のときに少し出てくるだけですが、抜群の存在感。さすが大きいだけある可南子ちゃん。素敵な子です。本当に惜しい人材だったなぁなんて思っちゃうんですが。まぁそこは置いておきます。


「落ち着いた」と、上で書いたんですけれども、やっと、祐巳ちゃんの妹問題も決着を迎えそうだなという、今巻を読んでいてそういう一条の光を見出した感じがしたのが大きいかなと。
「いつになったら」とか、「この状況からどうやって」とか、そういう疑問が無くなったというか。
悪く言えば、消化ゲームといった感じでもあるんですが、有終の美を飾ってねと、そんなかんじなのです。
本当に長かったですからね・・・この話は。
祐巳ちゃんと瞳子ちゃんが姉妹になったとして、その後どうなるのか。それはわかりませんが、なるようにしかならないのでそのあたりは全く考えていません。ただ、今はマリみてを精一杯楽しみたい気持ちで一杯です。


ん〜、やっぱり私はマリみてがもうすぐ終わると、そう思ってるみたいですね。客観的にみるとそんな気がします。
次巻は、いつ頃でるんでしょう。早ければ年末でしょうか。
私も結構落ち着いてしまったので、そんなに早く出なくてもいいかなぁなんて思ってるんですが、情報でてきたら急に読みたくなる気がします。私はそう言う人だから。
そう、「急に新刊が出たので」略してQSD。
違うわ!


軽くボケたところで、今回はこの辺にしたいと思います。
例によって、書きたいことがでたら適当に書き散らすかもしれませんが、たぶん書かない気がします。
いつも、長々と書いても書いても書き足りない気がするんですよね。
それだけマリみてが好きだってことかもしれません。
いや、単に文章力がないだけか・・・。


あぁ、書いてたらやっぱり日付またいじゃったなぁ。
サクっと書くつもりだったんですけれど、仕方ないですね。


それではまた、皆様ごきげんよう


***追記・誤字訂正 2006.10.05 7:35

*1:嘘ばっか!前作『仮面のアクトレス』中の「素顔のひととき」であったばっかりじゃん!なんで忘れてたんだろう コメント欄参照

*2:『イン ライブラリー』における「ジョアナ」はありますが、あの時は瞳子ちゃんの(祐巳ちゃんへの)気持ちは殆ど語られなかったと言っていいと思います

*3:「バレバレだったじゃないですか」とか言わない、そこ!

*4:「私なんか」っていう風に卑下しまくってました

*5:いつだったか、劇中のキャラの誰か、「演劇部の人に姉妹の申し込みされるかもしれない」とか言ってた気がしますね

*6:重ねて言いますが、「バレバレだった」とか言うの禁止

*7:私の場合、このシーンでは祥子さまの祐巳ちゃんへの信頼に対して感動してたんですが