硫黄島からの手紙

【ワーナー公式】映画(ブルーレイ,DVD & 4K UHD/デジタル配信)|硫黄島からの手紙
というわけでみてまいりました、クリント・イーストウッドによる硫黄島二部作第二弾。
硫黄島からの手紙』です。


先に感想から言ってしまえば、期待に応える出来の映画で、とてもよかったとおもいます。
面白いという類の映画ではないんですが、見てよかったなと、むしろ見せたいと思わせる映画です。
凄く客観的な描写だなと思うんです。
でも、だからこそ伝わると言うか、深く考えさせるのだなぁと。
先日地上派放送されていた『ミリオンダラー・ベイビー*1でも、そういう感じだったと思います。さすがイーストウッド!私の*2ハリー・キャラハンです。


硫黄島からの手紙』は、クリント・イーストウッド監督による硫黄島をテーマにした硫黄島二部作の第二弾。第一弾『父親たちの星条旗』も現在公開中。脚本はアイリス・ヤマシタ(あいりす・やました)、製作総指揮・共同原案としてポール・ハギス。製作にはスティーブン・スピルバーグ
主演は栗林忠道(くりばやし・ただみち)中将を演じる渡辺謙さん。
ほかに、元パン屋の兵士西郷役に二ノ宮和也(にのみや・かずなり)君、バロン西役に伊原剛志(いはら・つよし)さん。伊藤中尉役に中村獅童さん。また、西郷の妻花子役として裕木奈江*3(ゆうき・なえ)さんが出演されてました、久々にみました、裕木さん。


絶対善でもなければ、絶対悪でもない、かっこよいところはかっこよく、かっこわるいところはかっこわるい。ただ、硫黄島で戦った人たちを描いた映画。そんな感じのする作品です。
予想通りというか、前作『父親たちの星条旗』とリンクする部分もありますし(当然か)、やはり、前作を見ていると、この時アメリカ側は・・・と言った感じで状況把握もしやすいしお奨めです。
もし、見られていなくとも、今作だけでもちろん独立していますし、今回は、多少短い回想シーンが挟まるものの、時間軸はひとつ*4なのでわかりやすいと思います。
基本的には、栗林中将と西郷を軸に、彼らの書き残した手紙とともに、硫黄島が語られていく形になっています。


見て思ったんですが、私は日本人であるにもかかわらず、知らずにいた事が多すぎたなと反省。
知ったところでどうなるものでもないと言えばそうですが、いろいろ感じるところはあります。
本当にいろいろ。


見ていて思ったことについて思ったんですが、何故これが日本で撮れなかったのかと。
こういう風に考えさせる機会をつくる映画が何故アメリカ映画なのかと思いました。
アメリカ映画が嫌いとかいうわけではなくて、本来これは日本で作られていなければならない映画ではないのかなぁという思いは強かったです。
もしかしたら、あったのかもしれませんが、この一連の硫黄島二部作のように、過去の戦争をこれほど客観視して作られた戦争映画を私は知りません。客観・・・というか、感動を押し付けないというか。感情を強制しない見せ方。
変に恣意的というか、思想に凝り固まった映画よりも、こういう風に客観的に描いた映画のほうがよほど心に響くし、いろいろ考えさせられるのではないかなと、今日も映画館で見ていて思いました。すごいいろいろ考えましたし。
この点は少し哀しかったですね。


とは言うものの、この映画の言いたいこととして、ひとつだけ感じたことがあって、2部作を通してみると、闘っている兵士たちが、志願か徴兵かの違いはあれど、普通の人だった*5という点です。国同士の戦争で、普通の人たちが戦ってるという構図。
お互いはただの普通の人間なのに、戦争だから戦わなければならない、そう言う場所。
哀しいけれど、戦争だから。そんな印象を持ちました。


それに関連してもうひとつ感じたのは、クリント・イーストウッド監督は、観客を信頼してるのかもしれないなと。
やっぱり、物を表現すると言うか、監督さんなんていうのは自分の考えを見せ付けたいという思いを持った人が多いと思うんですよ、もちろん、そうやって出来た傑作だっていくつでもあると思います。
ただ、客観的な視点に立った映画を作ると言うのは、観客を信頼していないと撮れないのかもしれない。
自分としてはこうみてもらいたい、という思いを抑えて*6、ただ、観客に委ねる。結構難しいことなのかもしれません。


監督は、たぶん、こういうことがあったんだと言う事を知って欲しかったのかもしれません。
それを知ってどう思うか、感じるか、考えるかは見た人次第。


見終わった後、自分がもし文科省の人間だったら全国の児童生徒学生たちに見せたいなと、そんな事を思わず思ってしまいました。この映画を見て考えることって本当に多いと思います。


あの戦争で亡くなった方々が安らかに眠ってくださることを祈りたいと思います。
見る意義のある映画だなと思いました。良かったです。

*1:よくよく考えれば、(広告的意味合いを考慮に入れても)地上派放送されるまでのラグがとても短い

*2:つっこみ不要

*3:クレジット名義はNAE

*4:栗林中将着任から、硫黄島戦闘終結まで

*5:将兵職業軍人ですが

*6:最初からそんな思いは無いのかもしれませんが